【対談】ブランド初期メンバーと語る、wjkのこれまでとこれから。
2004年の創業以来、「不変」と「普遍」をテーマに服づくりを続けてきたwjk。
今回はPR・営業を担当する藤原と、商品企画も手掛ける名古屋店店長の玉川による対談でブランドの遍歴を振り返ります。創業当時からwjkに携わってきた2人が考える、wjkのこれまでとこれからについて。
wjkにとっての不変と普遍
− wjkの「不変」と「普遍」というテーマについて、2004年の創業以来それはどのように体現されてきましたか?
玉川:「良いものは変わらない」「残る物は本物」という事実をブランドの根幹に置き、ものづくりを続けてきたwjkですが、そのニュアンスは少しずつ変わってきたように感じます。
wjk初期においては、当時の創業デザイナーの感性を通して表現された「普通」が不変性や普遍性を体現していました。
そうして形作られた「普通」を、代替わりしたデザイナーがまた自分の感性で捉え直しながら、いまのwjkに変化してきたと思います。
藤原:一過性の注目を集めるためにある意味「悪目立ち」とも言える企画を考えることは容易いけれど、それでは「残る本物」をつくり続けることはできない。その考えは、創業当時に形作られたものですよね。
一見普通に見えるけど「実は技あり」というようなものづくりが、変化をしながらもwjkが持ち続けている感性かなと。
しかしwjkがコラボに求めた意義は、話題性や戦略的なファンの拡大のためではなく、あくまで「本物」を追求するため。
そのジャンルのスペシャリストにものづくりを依頼することで、本物の服をお客様に届けることが目的だったので、一切コラボ先の名前を出しませんでした。
藤原:せっかくコラボした相手の名前を出さないという選択は、一見もったいないようにも思えますが、それは根底に「変わらない本物」をつくるという意志があるからです。
それは同時に、wjkのものづくりを認めてくださっているお客様を大切に思うからこその姿勢でもあります。
玉川:また、店頭においては一貫して「トルソーは置かない」という意志が創業時のデザイナーにはありました。
こだわってつくられた本物の服だからこそ、それは飾るものではなく実用的に纏うものでなければならないという考えがあったからです。
「用の美」ではないですが、店員が着て、動いて見せることが服の良さを伝えるためには最も重要だと。
服づくりだけでなく、その打ち出し方、売り方やお客様との向き合い方に至るまで、「不変」と「普遍」を体現するための選択がされてきたと思っています。
− 服づくりにおいては、どのように「不変」と「普遍」は体現されてきましたか?
玉川:wjkは服づくりにおいて世にある名品の普遍的な価値を解釈し、wjkの視点で焼き直して表現しています。
M65をはじめ、wjkが得意とするミリタリーシリーズやアメカジの王道デザインリソースはほぼ網羅しています。
他にもスカジャン、デニム、ニットなども名品へのリスペクトを元に独自のアレンジを加えたものが多いです。
そこにカルペディエムから影響を受けた「アルチザンブランド」としての視点を加え、使い込むことで味わいを増していくような本物の素材と仕立てによる服づくりだけでなく、新品の時点で味わいある佇まいに仕上げた服も展開しています。
「アルチザンブランド」についてはこちらの記事もご覧ください。
https://wjkproject.com/story09/story09
藤原:先ほど話に上がったコラボやオリジナルラインで言うと、スウェット・ジャージのみを扱った『reluxe made in wjk』や、復刻デニムのパイオニア的ブランド「Denime(ドゥニーム)」とコラボした『wjk jeans』、シャツを様々な切り口で提案した『shirts made in wjk』といったアイテムごとにその魅力を掘り下げたラインも展開していました。
また、服以外のアイテムでは、メガネづくりに一業一貫してきた金子眼鏡によるアイウエアラインの『SOLE BY wjk』、TolixやJieldeといったインダストリアル・フレンチヴィンテージをはじめ、アンティークパーツをアレンジしたオリジナルの家具を展開する『wjk furniture』なども。
いまはこれらのラインは展開していませんが、名品のデザインリソースや素晴らしいものづくりをされている職人さんをリスペクトし、「不変」と「普遍」をテーマにwjkの視点で捉え直したものづくりに数多く取り組んできました。
創世記からの変化、いまのwjkになるまで
− 創業当時から、デザイナーが代替わりすることでブランドのあり方や商品の打ち出し方にも変化はありましたか?
玉川:二代目のデザイナーはものづくりに造詣が深い人物で、初代のデザイナーからの意志を引き継ぎつつ、よりテーマやディティールにこだわった服づくりをしていました。
その想いの強さは一層ディティールを光らせていた反面、素人には理解が及ばない域までこだわりが強く出てしまうこともありました。
一方で、他ブランドにはない細部への作り込みに触れ、興味を思ってくれる方たちとの接点づくりになったと思っています。
藤原:その時代は店頭での見せ方にもこだわり、世界観を醸成するためのアイテムを用いたり、インスタレーションのような凝った空間表現まで手がけていました。
創業当時と同じ理念を掲げながらも、かなり表現のあり方が変化した時期でした。
玉川:近年はデザインチーム化しアプローチ・手法も広がりました。一方で、ディティールへのこだわりや、ものづくりのストーリーも含めてwjkの服に価値を感じてくださる方達にとっては、ライトに映るものにはwjkらしさとして伝わりにくい部分もあります。
試行錯誤に苦しみながらも、こうした変化や挑戦を通して、見えてくるものがあります。
ファンを置き去りにするようなつくり手本位の行きすぎたこだわりでも、これまでの文脈やファンの気持ちを無視するようなライトな方向転換でもなく、wjkのファンでいてくれるお客様に向きあった服づくりがしたい。
需要とのバランスを取りながら信念を貫くのは容易ではないけれど、これも必要なプロセスだと感じています。
− 試行錯誤の中で生まれたwjkの名作、定番化したヒット作にはどんなものがありますか?
玉川:カルペディエムに影響を受けて生まれたしわ加工シャツは、創業当時から人気のある代表作です。
ミリタリーではwjkの代名詞と言っても過言ではないアメリカ軍M66や、フランス軍のM47カーゴパンツも。
軍モノ本来の野暮ったいシルエットをアレンジし、タイトで綺麗なラインで仕上げています。リリース当時から人気のデザインです。
藤原:他にもフライトジャケットの名作MA-1も、wjkらしいディティールへのこだわりと無駄を削いだアレンジが人気の商品です。
玉川:加工や素材にフォーカスしたものでは、レザーポケットTシャツ、和歌山県の風神莫大小さんが生地を手掛けるエクストラヘビージャージも。
紆余曲折しながらも、挑戦を繰り返す中でヒット作が生まれたり、新しいファンの方にwjkに注目してもらうきっかけになってきたなと思います。
藤原:ただ、挑戦をする中でも絶対に超えてはいけない一線もあると思っています。これまで私たちは「本物」を謳い、こだわったものづくりでお客様と一緒にブランドをつくってきました。
それなのに、ここにきて目先の利益を取るためにディティールに手を抜いたり、粗悪な素材選びをしてしまったら、もう二度と信頼関係は取り戻せないと思っています。
初代デザイナーの言葉ではないですが、「普通」のこと、当たり前のことを当たり前に守って行かなければ、ブランドとしての未来はないなと。
玉川:変わらないこと、変わらない本物を追求し服をつくることは、言葉で言うのは簡単だけど、それによって自分達にある意味試練を課している側面もあります。
変わらずにつくり続けるということは、「いつでも買える」と購買意欲を刺激しにくくなるということだし、品質が良すぎるために持ちがよく、中々買い替えに至らない。
お客様に心配されるほど傷まない本物をつくっていることは誇りであり、一方で悩みの種でもあるのです。
これからのwjkを考える
− 試行錯誤を繰り返す中、今のwjk、今のファンとの関係性をつくってこられたと思いますが、これからのwjkはどうありたいと考えますか?
藤原:今取り組んでいるALPHABET COLLECTIONでは、素材からこだわった本物の服を若い年齢層の方にも体感してもらうための入口になればと思っています。
今までwjkが挑戦したことのない切り口での取り組みですが、試行錯誤をしながら、新しい形の「不変」と「普遍」を体現していけたら。
玉川:新しいことに挑戦をしつつも、ただ話題性だけを意識したような、とにかくバズればいいというようなことは、wjkとしてはしたくないですね。
夢物語を追うのではなく、紆余曲折ありながらもwjkが愚直に貫いてきた、ものづくりへの本気度でファンを惹きつけたいという思いが強くあります。
藤原:今は女性がメンズの服をアレンジして着てみたり、ジェンダーレスに服を楽しむ土壌ができつつありますよね。
そんな中で例えば、本物の服が性別や世代の垣根を超えて着てもらえたらとか、変わらない本物の良さを守りながら変わっていきたい。wjkらしい挑戦をこれからも続けていきたいですね。